SRIがMembravoをスピンアウト


SRI出資のスタートアップMembravoは、SRIが発明した新しい高分子の膜を活用し、水素に対する世界のニーズを満たす


化石燃料から再生可能エネルギーへの世界的なエネルギー転換のなかで、水素は重要な役割を果たせる可能性を秘めています。課題は、水素の分離が容易ではないということです。起業家のJoe Sawa氏は世界的石油大手企業のShellで水素プロジェクトに携わっていた時にこの課題をより明確に認識し、その後カリフォルニア大学バークレー校のHaas School of Businessでエネルギーとサステナビリティ(持続可能性)をテーマとして学び、MBAを取得しました。

Sawa氏が水素の分離に興味を抱いたきっかけは、実世界で非常に優れた性能を発揮する先進的な水素を分離できる膜を開発したSRIのリサーチエンジニアのMilad Yavariとの出会いでした。Yavariは、実世界で非常に優れた性能を発揮する先進的な水素分離膜を開発したチームの一員でした。このSRIの膜開発チームは、水素の分離に最適なポリマーを特定しただけでなく、米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)の支援の下、15年にわたり集中的に研究開発に取り組んで製造プロセスを微調整し、実証実験にも成功しました。

Sawa氏とYavari会話のは、最終的にSRIの最も新しいスピンアウト企業「Membravo」誕生につながりました。MembravoはLeoLabsやXona、Kurve、NinjaTechなどのSRIからスピンアウトした革新的な企業の一員に加わったのです。

「私たちの実証実験では、優れた性能と耐久性を実証できました。私たちは現在、資金調達やチームの拡大、そして世界最大級のエネルギー企業数社とパイロットプロジェクトについて協議を進めています」―Joe Sawa氏

現在の技術では水素と他の気体とをコスト効率よく分離できないため、数十億ドル相当の大量の水素が産業廃棄物として焼却されています。これは経済的には大きな機会損失であるとともに、不必要なCO2の排出にもつながっています。水素市場を今後も成長させていくには、既存の産業インフラ内で水素をコスト効率よく水素を分離できる、これまでよりも優れた方法が必要なのです。

Sawa氏とYavariは二酸化炭素の排出量を大幅に削減するとともに、重工業のコストを数十億ドル規模で削減できる可能性があるのではと考えました。Membravoの次世代高分子膜は、水素は通過させ、他の気体は遮断するフィルターとして機能します。この高分子の膜は特に、産業用の環境下における過酷な高熱や高圧力、そして刺激の非常に強い化学薬品に耐えられるよう設計されています。

この技術の商業化の道筋が具体化したのは、Sawa氏がSRIのEntrepreneur-in-residence(客員起業家)プログラムに参加した時でした。このプログラムでは、アドバイザーや市場データ、研究施設、オフィス施設などを提供するとともに、SRIの知的財産も活用でき、SRI Ventures(SRIのベンチャー部門)を介して商業化に関する支援も受けられます。Sawa氏とYavariは9カ月にわたり、市場検証のための顧客インタビューの実施や事業戦略と実行計画を策定し、そして顧客とのテストの準備として膜ユニットの製造に取り組みました。

「SRIでEntrepreneur-in-residenceプログラムに参加できたのは素晴らしいことでした。SRIのエンジニアや科学者、そして起業家のエコシステムはイノベーションを成し遂げるノウハウを理解しているのです」とSawa氏は述べています。

潜在顧客との協議を通じて、この膜の用途は、水素の製造から消費、流通、そして貯蔵に関わるほぼすべての過程において応用できることがわかりました。このような熱心な反応に刺激を受け、SRI Venturesの後押しを得て、独立したスタートアップ企業としてスピンアウトさせるSawa氏とYavariの思いに拍車をかけたのです。

「Membravo開発を続けられることをの非常にうれしく思っています。私たちの実証実験では、優れた性能と耐久性を実証できました。私たちは現在、資金調達やチームの拡大、そして世界最大級のエネルギー企業数社とパイロットプロジェクトについて協議を進めています。これらはすべて、Membravoの技術拡大につながるとともに、地球にとってよりクリーンで効率的な未来の実現への貢献に役立つでしょう」とSawa氏は述べています。

MembravoやSRIが支援するその他のスタートアップ企業について、詳しくはSRI Venturesにお問い合わせください。

本資料は、米国エネルギー省国立エネルギー技術研究所の授与番号DE-FC26-07NT43090の支援を受けた事業に基づいています。


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